伝統と革新のイタリア
日本の物価が高い高いと言われますが、イタリアはその比ではありません。例えばガソリン代を見てみると、じわじわと値段が上がり、ハイオクなら日本円で330円、ディーゼルガソリンでも280円ぐらいします(日本の約2倍です)。少し円ユーロが落ち着きましたが、少し前なら満タンにするのもためらうほどで、涙が止まりません。
ユーロでの表記ですが、セルフでこの金額です。
そんな日本に比べて物価の高いイタリアですが、今、ファッション業界では「イタリアのファッション業界の元気がなくなってきている」という話題が出ています。GUCCIを代表とするケリンググループは今期1~3月期で11%もの売上を落としています。中国を中心とするアジアでの景気低迷も理由には挙げられますが、エルメスは絶好調、LVMHは好調なので、それだけの要因ではなさそうです(エルメスは12%の売上増です)。
ここでナポリのサルトリアも戦々恐々としています。有名サルトリアは販売金額を上げることで何とか利益を確保していましたが、世界中の顧客やセレクトショップから徐々にそっぽを向かれそうなのです。やっとコロナの騒ぎが終わったと思ったのに…という感じです。
そこで上がってくる話が、「俺たちの作る服が古臭いから、受け入れられないのかな?」という理論です。確かに、イタリアのサルトリアは伝統と作りの良さをブランディングの核にしています。今、伝統はあるけれど…と悩んでいるのです。
伝統か革新か
イタリアはいつも何かしら新しいもので顧客を楽しませてくれます。代表的なのが車や家具、そして洋服です。特にイタリアの洋服は、どこかに常に新しさを感じさせてくれます。これには長い洋服の歴史が関係しています。イタリアやフランスの洋服は、長い歴史の中で培われた「引き算が上手」なのです。新しいデザインを生み出す際、未熟なデザイナーは足し算でデザインをしてしまいがちですが、歴史ある洋服において足し算のデザインは容易に陳腐に映ります。洋服のデザインにおける足し算は、天才的な才能がなければ成り立たないと言われる所以です。
数百年の歴史
イタリア、特にナポリスーツの歴史は数百年に及びます。その数百年の歴史を経てたどり着いたのが、今の美しいデザインです。ほぼ完成されたデザインといっても良いでしょう。その中で国ごと、地方ごと、さらにサルトリアごとに、独特のデザインが生み出されてきました。
MICHELE&shinはイタリアンスーツを作っています。でも、海外にいるほど日本に対する誇りを感じます。こんなに素晴らしい国はないといつも思います。そんな日本のスーツも独自の進化を遂げ、仕事で着るスーツとして最高のクオリティだと感じます。イギリスは長く着ることを想定して鎧のような作りで顧客を魅了し、イタリアは「男をセクシーに見せる」を基本とした作りで顧客を魅了しています。
歴史と革新でさらに新しいスーツが生まれる予感
冒頭で述べたように、今、サルトリアは悩んでいます。「俺たちの作る服が古臭いから、受け入れられないのかな」と。しかし、イタリアのサルトリアは必ず新しい発想で新しいデザインを生み出してきます。苦悩があるほど素晴らしいものが出来上がるのです。それはイタリアの長い歴史が証明しています。
今からのイタリアサルトリアに注目しておいてください。間違いなく、これまでの歴史を踏まえつつ新しいスーツが完成してくるでしょう。
今回はMICHELE&shinファミリーで、顧客のナザリオの作品、このスーツとコートもとても素敵です。ぜひ参考にしてください。