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街並みに溶け込む冬のフィレンツェ

2024年12月01日

冬のフィレンツェは観光客が少し減り、本来のフィレンツェが戻ってきたような感じがします。フィレンツェの良い季節はやはり春から夏でしょう。朝早くから太陽が昇り、夜9時を過ぎても落ちそうで落ちない太陽がドゥオーモを照らし、観光客をもてなしてくれます。

人間は不思議なもので、暗くなると行動が億劫になります。そこで登場するのがサマータイムです。廃止すると言いながらなかなか廃止されないイタリアのサマータイム制度。イタリア政府のお得意の「するする詐欺」ですね(笑)。これはどこの国でも同じでしょうか?

サマータイムは、3月末の日曜日から10月末の日曜日まで、時間を1時間早め、暗くなる時間を遅らせます。そうするとなぜか行動時間が長くなります。このサマータイム、イタリア語では ora solare(オーラ・ソラーレ)と言い、直訳すると「太陽の時間」となります。さすがイタリア、夏時間を「太陽の時間」と呼ぶセンスが洒落ています。

冬のフィレンツェは男を魅せる

冬のフィレンツェは、本当に美しい街へと変わります。その美しい街並みに溶け込み、男を魅せるのが、このスーツとコートです。

今回のモデルは、MICHELE&Shinの顧客であり、モデルも務めてくれるVincent Lucaです。彼からの依頼はちょうど1年前。「ミケーレ、いつものように次のPITTI UOMO用に作ってほしいけど、今度のイメージはフィレンツェの冬に溶け込むスーツとコートにしたいんだ」と。

普段、彼は割と派手な格好を好むイタリアン紳士です。そこで私は「Vincent、街並みに溶け込むなんて、急にどうしたの?頭でも打った?」と聞いたところ、彼は「打ったのかな?それか大人になったのかな?」と返してきました。「じゃあフィレンツェの壁に溶け込むようなレンガ色で作ろうか?」と提案すると、「いいね!それでいこう」と(笑)。いい大人がする会話とは思えませんが、こんなやり取りを楽しみながら作るのが最高にハッピーなのです。そして彼が選んだのは、やはりこのレンガ色の生地でした。



新たな出会いから生まれたこのコート

今回Vincent Lucaと打ち合わせして決めたこのコートの生地は、MICHELE&Shinオリジナルファブリックです。ネップ感のある素材感が素晴らしく、さすがイタリア製と感心させられます。

この生地との出会いは、初めて訪れたプラートの生地店でした。その店のことは以前から知っていましたが、市内のど真ん中にあり、イタリアの郊外にしては珍しく駐車場がありません。普段、生地を買い付けたら車に積んで自分で運ぶので、駐車場がないのは厳しいのです。でも、現場に行かないと新しい出会いはありません。

ネットがこれだけ発展した現代に、こんな無駄なことをしている自分が滑稽に思えることもあります。しかし、素晴らしい生地に出会えるのだからやめられません。やっぱり、私は現場が好きなんです。

さて、ここからは写真で作品をお届けします。

紺×茶(アズーロ・エ・マローネ)の新しい可能性を感じさせる美しいスーツです。

レンガ色のコートと街並みが見事に調和したスタイリングに脱帽です。

今回はVincent Lucaに作ったスーツとコートをご紹介しました。ぜひ参考にしてください。