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本当のクラッシックナポリへの道(5)

2024年06月21日

マニカマッピーナの歴史

今回の話しは、これこそナポリスーツの代表的なディテールとも言える「マニカマッピーナ肩付け」の話しです。マニカマッピーナ、(何故か日本ではマニカカミーチャと呼ばれます。)シャツ袖と訳せれる、写真の様な肩付けの事を言います。多分、ほとんどの人はナポリスーツをナポリ市内で作られてると思ってる人が多いと思います。しかしナポリスーツも今や世界的に認められたブランドとなり、かなりの量を作っています。なのであんな土地代の高いナポリ市内では、よほどの超高級サルトリアでしか工房は持てないし、作ってません。ほとんどのサルトリア含めブランドは市内から車で 30 分程離れた場所に工場や工房を持ちます。具体的な場所は昔から何故かナポリ空港近くの内陸にあり、特に有名な地域がカザルヌーボデ、ナポリ。ここには本当のナポリスーツが昔から脈々と作られています。僕の認識不足かもしれませんが、不思議と海に近い所の工場は全くないんです。

そんなナポリの片田舎ではこの袖付けの呼び名は間違いなく「マニカマッピーナ」です。

マニカカミーチャでも通じますが、少し違和感があります。

マニカマッピーナとマニカカミーチャとマニカズラータ

多分、昔誰かがイタリアに言った時にマニカカミーチャと聞いたのが始まりの様な気がします。イタリアのサルトリアでマニカカミーチャと言っても問題無く意味は伝わります。意味さえ伝われば何も問題ないのがナポリ流。そもそもそんな細かい事をナポリ人は誰も気にしてないので大丈夫です。

実は、マニカの肩付けにもサルトリア毎に多種多様な付け方と特徴があって、呼び名も違います。例えば MICHELE&shin の様に大きくギャザリングでよせて、上肩が袖に上から少しのる様に付けるのをマニカミッテーレと呼び、ギャザリングをそこまで多くせず、肩と袖の高さを合わせて作るのを、マニカマッピーナと呼び、ナポリ高級紳士服の代表であるアットリーニと言うブランドがありますが、ここの袖付けは薄いパットを入れるのを基本とし、あまりギャザリングをぜず付けますが、この付け方をマニカズラータ付けと呼びます。

少し紹介しただけでもこんなにいっぱいの肩付けがあります。多分他の地方に行くと更に面白い肩付けがあるのでしょう。時間が出来たら他の所にも勉強に行ったら楽しそうです。

サルトリア毎に個性を出すのがナポリ流

本当にナポリだけでも様々な肩付けがあります。各サルトリアに「俺の所のデザインが最高だろう?」と自信満々に出してます。この感覚は、控えめな日本のスーツ作りには無い感覚です。自己主張をして、他より個性を出さないと認められないのがナポリであり、「良いものを作ってたら自然と認めれれる」では通用しないと感じます。「どうだ・・良いだろう?」がナポリでは必要なのです。そんなナポリだからこそ、各サルトリアは全てに個性を出し切磋琢磨しています。この切磋琢磨が今のナポリスーツを世界的に認めさせた原動力なのです。

ナポリでもパットは入れる作りはいっぱいある。

ナポリスーツでも肩パットを入れるサルトリアは存在します。何故か肩パット無しがナポリスーツの様に思われてますが、実際は全く違います。そんなナポリの肩パットもサルトリア毎のこだわりが凄いのです。このパットもサルトリアは既製品をほぼ使いません。オリジナルで作らせるのです。ちなみにイタリアのサルトリアでは肩パットを「スパリーナ」と言います。この写真は MICHELE&shin のスパリーナです。MICHELE&shin でもたまに使ったりもします。そんなスパリーナを入れないナポリのマニカの肩付けですが、この始まりの話が面白いのです。

副資材を減らそうから来てる。

このような肩パットなどの部品を副資材と言います。スーツ作りにはこの副資材が必ず必要で、非常に重要な部品です。そこで聞いた話が本当に面白いのです。「昔のナポリスーツはちゃんと肩パットが入ってんだ。それがいつかの時点から肩パットを無くして作る様になったんだよね、その理由は、安く作る発想からなんだ。」「肩パットを無くす方が安く作れるだろう?お金をどうにかして節約して浮かそうとしたか結果なんだ。それが不思議だよな、今ではイタリアを代表するスーツのディテールになり、世界的に美しい袖付けとなってるんだからね。」

どうも、そうみたいなのです。「マニカの袖付けは安く職人の安く作る努力から始まった」のです。

さて、今回はナポリを代表されるマニカの袖付けの話でした。どうもマニカの袖付けが、動き易さや可動範囲が広いは後付けの話みたいですよ。

次も楽しみに。