柔らかで流れるようなラペルを求めて
スーツの見た目や完成度を左右する大きな要素の一つがラペルです。スーツの「顔」ともいわれ、その表情を決める最も重要な部位といえるでしょう。MICHELE&Shinが最もデザインにこだわる場所でもあります。
MICHELE&Shinが目指すラペルは「柔らかで、ふんわりと流れるような表情が出せるラペル」。その実現を目指して日々研究を重ねています。今回は、この「柔らかでふんわりした流れるようなラペル」が、少しずつ完成に近づいていると思えるスーツをご紹介します。
羽のようなラペルを目指して
MICHELE&Shinが目指すのは「カーディガンのような着心地の究極のスーツ」です。しかし、着心地だけを追求するあまり、シルエットやデザインをないがしろにするのでは本末転倒です。私自身、いくら着心地が良くても格好悪い服は着たくありません。それに、利益のために妥協した商品を作って提供しても、いずれメッキは剝がれます。それでは意味がないのです。
MICHELE&Shinは究極の着心地を追求する一方で、それ以上に大切にしているのが「カッコよさ」です。現代では「カッコいい」という言葉が陳腐に聞こえることもありますが、快適な日常服が主流の今だからこそ、「カッコよさ」には意味があると感じます。MICHELE&Shinは格好をつけている紳士が大好きです。
スーツの「カッコよさ」を決める重要な要素の一つがラペルです。そしてMICHELE&Shinがこだわるのは、「スーツを仕事着の鎧にしない」ということ。そのために必要なのが、柔らかく流れるようなラペルです。理想は羽のようなラペル。しかし、これを実現するのは非常に難しい挑戦です。
カッティングと八刺しの関係
ラペル作りを進めれば進めるほど、その難しさを痛感します。これは職人泣かせの作業です。私自身も具体的なイメージを持ちづらく、完成したものを見て「違うんだよね」と感じることが多々あります。職人からは「何が違うの!?」と言われ、私も「何か、もっとふんわりなんだよね」と答える始末。職人から「もっと具体的に説明しろよ!」と叱られながら、何度も試行錯誤を重ねて作り上げていきます。
そんなやり取りを繰り返している中、ある時、偶然完成した試作品が理想通りの仕上がりでした。「これだよ、これ!」と。試行錯誤の中で偶然に辿り着くこの感覚には、人間の知恵を超えたものがある気がします。
写真をご覧いただければ分かると思いますが、柔らかでふんわりとした羽のようなラペルが表現できています。この雰囲気を出すには、手縫いの八刺しと芯材、そしてカッティングが重要だということが分かりました。八刺しが多すぎると、この柔らかさが失われ、逆に鎧のような硬い表情になってしまいます。
これ以上説明が長くなるのもどうかと思いますので、ここからは写真で作品をご紹介します。
また一歩、新しい表現に近づいた気がします。ものづくりにゴールは本当にありませんね。